「腰の痛みや痺れ」「脚の脱力感」「下半身の麻痺」などの症状に心当たりはありますか?
その症状は、椎間板ヘルニアが引き起こしてるかもしれません。この疾患は、椎間板と呼ばれる背中の組織が加齢や、衝撃を受けたことで傷ついてしまったり、重たいものを背負ったことによって潰れてしまうことで、腰回りや下半身に痛み、麻痺、虚脱感を与える疾患です。
激しい動きの多いスポーツ選手や、無理な動きを強いられる芸人さんなどにも、ヘルニアは起こりますのでご存知の方も多いのではないでしょうか。今回は、椎間板ヘルニアに関係する椎間板の構造、ヘルニア発症のメカニズム、ギックリ腰との違い、予防方法について確認していきましょう。
椎間板の構造とヘルニア発症のメカニズム
まず最初に「椎間板というのは、体のどこの部位なのだろう」と思う方もいらっしゃると思うので、簡単に椎間板の構造から説明していきたいと思います。
椎間板というのは背骨に存在する軟骨の事です。背骨は椎骨とよばれるブロックが積み重なるようにできており、そのブロックとブロックの間には椎間板といわれる軟骨が存在しているのです。またこの椎間板には水分とコラーゲンが多く含まれており、クッションの様に衝撃を受ける吸収性と弾力性を持ち合わせています。
また衝撃を吸収するだけでなく、この椎間板が存在することで骨同士の摩擦を防ぎ、上半身をスムーズに動かすことができるのです。
今回はこの椎間板が主役なのでもう少し説明を加えると、椎間板は髄核(ずいかく)と呼ばれる水分とコラーゲンで出来たゼリーの様に柔らかい部分と、それを覆う線椎輪(せんいりん)という固い部分とに分けることができ、この二つを総称して椎間板と呼びます。
ちなみに今回ご紹介しているヘルニアという単語ですが、これは本来あるべき位置に体内の組織がない、あるいは脱出してしまった状態を意味しています。つまり線維輪が傷がついたり、押しつぶされることによって髄核が流れ出したり、繊維輪が本来の位置から飛び出している状態を椎間板ヘルニアと呼ぶのです。
椎間板ヘルニアとギックリ腰の違い
椎間板ヘルニアはよくぎっくり腰と混同されることがありますので、そこの違いにも触れていきたいと思います。この二つは腰に立っていられないような激痛が走るという意味では似ている所があります。しかし治る期間一つとってみても別物とお分かりいただけると思います。
例えばそれほど重症でないギックリ腰は長くても1週間~10日程度で症状が治まり、自由に動けるようになりますが、椎間板ヘルニアが発症すると1年から長ければ3年近く治療が必要になります。もちろん椎間板ヘルニアも症状が軽ければすぐに治る場合もありますが、ギックリ腰より時間がかかるのは確かです。
さきほども説明した通り、椎間板は繊維輪が破壊され、髄核が流れ出したり、繊維輪がズレてしまう状態です、一方のギックリ腰は繊維輪に傷がついている状態で髄核が流れ出したりはしていません。
ケガの種類でいえばギックリ腰は腰が捻挫しているだけですが椎間板ヘルニアは組織そのものが破壊されていたり、位置がズレてしまっている状態なのです。
ですから腰に痛みが走るだけのギックリ腰と異なり椎間板ヘルニアの場合は痛み以外でも下半身の感覚が鈍ったり、脚の脱力感、麻痺、腰や足にかけての痺れなどが見られるのです。
椎間板ヘルニアの原因と発症する傾向が高い人
椎間板ヘルニアは、腰・椎間板に大きな負担を繰り返し掛け続けることで発症します。例えば、力仕事や立ち仕事の多い職場で働く方は椎間板ヘルニアを発症しやすいと言われています。また、デスクワークや長距離運転など長時間同じ姿勢を保ったまま作業でも発症する可能性が高いです。
そのほか、喫煙者も非喫煙者と比較すると、発症する可能性が高いと言われています。その理由は、タバコに含まれるニコチンの成分が関係しています。ニコチンは椎間板周辺の毛細血管を収縮してしまうので、椎間板に上手く栄養が行き届かなくなり、その影響で弾力性もなくなります。すると周囲の筋肉が椎間板を圧迫し、変形・破壊を招いてしまいます。
また若い人に比べてお年寄りに発症しやすい傾向もあります。その理由は椎間板は加齢と共に中に含まれる水分やコラーゲンが減少していき、弾力性がなくなっていくからです。そうなると若い時に比べて重いものを持った時に椎間板に掛かる負荷が増え、ヘルニアを発症してしまうわけです。
椎間板ヘルニアの予防と注意点
繰り返しになりますが、椎間板ヘルニアは腰への負担が主な原因です。例えば重たい荷物を持つ時には、低い姿勢でしっかりと膝を曲げ、ゆっくりと持ち上げるようにしましょう。こうすることで腰へ掛かる急な負荷を分散でき、腰への負担が軽減できます。
しかし、ここで注意したいことは前屈して物を持ったり、中腰の姿勢で動かないことです。前屈や中腰といった姿勢は腰にとても多くの負荷をかけます、なぜなら下半身の支えがまったくない状態で重いものを持っているからです。
通常、人間が腕で荷物を持つときは、腰、背筋、膝、かかとで重さを分散して持ち上げています。しかし、中腰や前屈の姿勢は背筋や、膝の支えが受けられず腰だけで持ち上げている状態になってしまうのです。ですからそのような姿勢で重い荷物を持つとギックリ腰や椎間板ヘルニア、あるいはほかの腰痛の原因となってしまうのです。
また運動不足を解消することも予防方法の一つです。私達の筋肉というのは、伸縮するゴムの様な性質を持っていて、これが伸縮することで力を発揮出来きます。しかし運動不足になると筋肉は硬直していき柔軟性を失ってしまいます。
柔軟性を失った筋肉では重たい荷物を持った時の負荷を吸収することができず、衝撃がそのまま骨、スジ、軟骨などに掛かってしまい、椎間板ヘルニアや腰痛を引き起こす原因になってしまいます。
まとめ
今回は椎間板に負担が掛かることで組織が壊れたり、ズレたりして発症する椎間板ヘルニアについて記事をまとめてまいりました。
腰痛を経験した事がある方はよくご存じと思いますが、腰を痛めると立っても座っても動いても寝ていても、背中に痛みが走り、どれだけ腰という組織が人体にとって大切なのかよくわかります。
普段からの注意であの痛みがなくなるのであれば、、とは思いますが意識していないとなかなか忘れがちになってしまうのも確かです。そんな時はやっぱり普段からの運動を心がけ、めんどくさい気持ちが襲ってきたときに、痛みを思い出すようにしましょう。